▲をクリックすると音声で聞こえます。

約束

中野 健一郎 神父

今日の心の糧イメージ

 30代半ば、高校の同窓会でのことです。お互いオジサンになり、仲良しだったK君の頭はすっかり禿げ上がり、皆から「課長」とからかわれていました。卒業以来再会したそのとき、私たちは高校時代に交わし合った約束を思い出しました。

 「ごめん。ケンちゃんが神父様になったら、結婚式の司式ば頼むって約束したとに、先に結婚してしもうたとさ」とK君。私も、「おいこそごめんね。今神父じゃなかとよ」と謝罪の言葉。申し訳なさと、K君が幸せだと分かった嬉しさとで、複雑な心境でした。

 私はその後も紆余曲折の歩みを辿り、回り道の後40代で、結局幼い頃から憧れだった司祭となり、今は苦戦しつつも幸せをかみしめ過ごしています。

 振り返ると中学生の頃、「僕を立派な司祭にしてください。いや僕は必ず立派な司祭になります」などと意気込んで祈っていました。でもその傲慢な鼻っ柱を、神さまは徹底的に折って打ち砕かれました。大神学校入学前に体験した教員生活は、私の人生でどん底の体験でした。力量でも人間性でも、自分の本当の姿を直視させられるのはとても辛いことでした。しかし現実を受け入れ、苦しみを通り過ぎた先には、新しく輝かしい世界が待っていました。神さまへの約束も十分に果たせない私。でも神さまは常に誠実で、私の一方的な約束を、神さまの方が守り実現してくださったのです。

 古代イスラエルの人々は、エジプトでの奴隷状態から自分たちを解放し、幸せな「約束の地」へ導くという、神さまからの約束を信じ続けました。その約束の実りが、人類に与えられた救い主イエス・キリストです。

 このお方に仕える司祭としての約束を、今日も新たな心で生き続けたいと思う毎日です。