私は、4人兄弟の一番上ですが、すぐ下に2歳違いの弟がいます。この弟の幼稚園でのエピソードを私はよく思い出します。
弟は、結構なアイデアマンです。よく幼稚園で行われる作業に貼り絵がありました。一つ一つ色紙から形を切り取り、のりを付けて画用紙に張り付けていくのです。ところが弟は、一つ一つ色紙にのりを塗っていくのがどうも不合理だと感じたのでしょう。弟のアイデアは皆とは違っていました。
弟はまず、画用紙にのりを塗り広げました。そして、画用紙一面に広げたのりが乾かないうちに、急いで色紙を切り取り、画用紙に貼り続けるのです。このやり方には欠点がありました。手間はかからないのですが、急いで色紙を切り張り付けるときに、のりが色紙に付き、色紙の色が前に張った色紙に滲んで付いてしまうのです。だから弟が作った貼り絵はいつも汚いのです。
ある時、担任の先生が休みで、代わりの先生が来て、貼り絵をすることになりました。弟はいつも通り自分の考えだしたやり方で、貼り絵をしていました。先生がみんなの貼り絵の進み具合を見回っていた時、弟のやり方にびっくりしました。そして「松浦君」と声を掛けました。弟はまた「汚いね」と注意されると思ってびくっとしたのですが、「松浦君、あなたのやり方はすごいね。自分で考えたんだね」と褒め始めたのです。すると弟は、自慢げに「そうです」と胸を張ったそうです。
それ以来、弟の性格が変わりました。びくびくしたような雰囲気から明るく生き生きとしたものへと。
自分が認められた時に元気になれるという根本的なことを、子供心にその時私も感じたのでした。