L・Mモンゴメリの「赤毛のアン」シリーズはよく知られているが、その中には、アンが登場しなくても魅力的なものも少なくない。「ロイド老嬢」もその一篇で、孤独だった魂が、愛することを知って幸福に満たされる物語だ。
主人公のミス・ロイドは、財産を失ってすっかり貧しくなり、誰とも付き合わない孤独な暮らしをしていた。その孤独は「ひどい胸の痛み」となって彼女を苦しめるほどだった。だが或る日、昔、縁があった人の娘が、彼女の村に身寄りのない若い教師となって赴任して来る。
「神よ、何かあの子のためにしてやれることを思いつかせてください」。ミス・ロイドは毎日、野生の花や果物を摘んで、匿名で娘に贈るようになった。
日々は生き生きと輝いた。彼女は若返ったようだった。遠くまで果物を摘みに行き、体は痛んだが、娘に喜ばれるので幸福だった。娘を援助するために家宝の陶器を売った時も、恋人の形見を手放した時も幸福だった。
誰かを愛する時、人は愛に満たされて、自分自身をも幸福にする。愛にはそんな力があるのだ。ミス・ロイドは人生の終わり近くになって、それを知り、喜びに包まれて残りの時間を生きたのである。
私たちはそれぞれ、孤独という「胸の痛み」を抱えていて、自分では治せない。愛されれば癒えるのにと思っている。だが最善の治療法は、愛することなのである。
娘の好きな花を誰も知らない木陰に見つけた時、ミス・ロイドはどれほど嬉しかっただろう。私たちのそばにも、よく見れば、誰かの好きな花が咲いていないだろうか。この物語には、生きる歓びと幸福がどこから来るかが書かれている。それを手に入れる方法も書かれている。