今春、新型コロナウイルスによる感染拡大で、我家の生活も一変しました。知的障がいのある8才のひとり息子も特別支援学校が休校となり、毎日うちにいます。妻と〈協力して乗り切ろう!〉と心に決めて、家族で自粛する日常が始まりました。
介助が必要な息子。夫婦で意見が違う時も互いに歩み寄り、共に生きる大切さを実感しました。 そのような日々を私は詩に綴ってみました。
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令和2年春、コロナウイルスは世に蔓延り、入院中の恩師に会えず、実家の両親に会えず、隣町の友にも会えず、一つ屋根の下、妻と幼い息子と共にひと日を過ごし、夕暮れる。
ついこの前まで実家で食べたお袋の味や仲間と囲んだ食卓は、もはや夢のような幸いだったと今更ながらに私は知る。
互いの顔を合わせ握手さえできない今、体の距離は離れているが、なぜだろう、心の距離は近づき、今宵、私は不思議なほど会いたい誰かの瞳が視える。
君よ、遠い瞳で私を見つけてくれて、ありがとう。
もうこれ以上かけがえのない人々が目に見えない敵にこの世から連れ去られぬよう、逝ってしまった人の命を決して無駄にしないよう、今こそ心と心を結ぶ縁の糸を想い、部屋の中に佇み、私の今を見つめよう、日々の素朴な暮らしを営もう。
『ステイ ホーム』の発令に、世界が覆われた季節の中で、地球という壊れかけの住家の回復を諦めず、夢見て
君よ、また会おう。再会の日に互いの肩を抱く瞬間を、私は待つ
(幾重もの闇を、光の矢は貫いてゆく)
今夜も、いつしか妻と息子の寝顔が並ぶ、ある街の静かな家で、秒針が刻む時の音を、私は一人聴いている。