▲をクリックすると音声で聞こえます。

心を一つに

森田 直樹 神父

今日の心の糧イメージ

 イエスが弟子たちと最後の食事をした時、次のように祈られた、と聖書は伝えています。

 「父よ、あなたがわたしの内におられ、わたしがあなたの内にいるように、すべての人を一つにしてください。彼らもわたしたちの内にいるようにしてください。」(ヨハネ17・21)

 イエスが「父」と呼んだ神さまと、イエスご自身は、まさに一つでした。そしてこれは、この一致へとすべての人を招いてください、というイエスの思いが込められた祈りなのです。

 ところで、イエスには弟子たちがいましたが、彼らの日常の論争テーマは「誰が一番偉いか」ということでした。これに対して、イエスは弟子たちの足を洗うという行動に出ました。他人の足を洗うということは、当時、奴隷の仕事だったようです。

 弟子たちの足を洗った後、イエスはこう語りかけます。「『わたしがあなたがたにしたことが分かるか。あなたがたは、わたしを「先生」とか「主」とか呼ぶ。...ところで、主であり、師であるわたしがあなたがたの足を洗ったのだから、あなたがたも互いに足を洗い合わなければならない。わたしがあなたがたにしたとおりに、あなたがたもするようにと、模範を示したのである。』」(ヨハネ13・13~15)

 「誰が一番偉いか」という論争の中で分裂しそうな弟子たちに対して、自ら模範となって、互いに仕え合い、一つになっていく道をイエスご自身は示されたのです。

 この「一つになる」という願いは、のちの教会の中でも、切実な祈りになっていきます。迫害下にあった初代教会にとっては、「心を一つに」することは、実に切実な願いだったのです。

 さらに時代を超えて、多くの危機に直面している現代の私たちにとっても「心を一つに」することは、切実な祈りとなり続けています。