あの時の、あの方のアドヴァイス、その一言になぜ従わなかったのだろうと、ホゾを噛む思い、そんな思いを抱えているのは私だけではないでしょう。
「あなたなら、絶対いけるよ」とまでおっしゃってくださったのに。
一生の不覚、なのでした。そのK先生も、今は天国におられます。
それは例えば、音楽でいえば私はクラシック一点張り、他のジャンルには見向きもしないといった強情っぱり、の姿勢なのでした。「そんなこだわりを捨てていろいろ挑戦してみたら。あなたは何でもこなせる人だ」とまでおっしゃってくださったのに、言うことをききませんでした。若気の至り。自分の思い上がりが恥ずかしくてなりません。
文学でいえば、純文学とエンターティメントというところでしょうか。そんな線引きをして、自分では「正統派」と思い込んでいたのですね。
小さい頃から「素直な良い子」、自分でもそう思いこんでいたのに意外に頑固、強情っぱりだったのだと今さらのように思います。
ずいぶん後になって、何かの折にK先生に「どうしてあのとき、先生の言うことがきけなかったのかと口惜しくてなりません」と告白したことがあります。「そうだろう。ぼくは間違ったことは言ってないと思うよ」とのことでした。その上、「あなたは右か左かと迷う時に、損な方を選ぶ傾向がある」と予言めいたことをおっしゃったのを憶えています。まさしくその通り。
一方、ある修道会の神父さまのお話に、「人間、失敗することはよいことです。神様、助けてください。お手上げです、と神様に全面降伏しますからね。成功した時がアブナイ・・・。だから心配しないで。」とありました。
安心してください!がその神父様の口ぐせでした。