73年生かされてきて、その時々で心に響く言葉は数多く聞いた。
その中でも年を重ねるにつれて、私の心に深く深く入り込んでいった言葉は、父の言ったことである。
「ミンコよい、この世のなかで大事なことは目に見えんもんが多かとよ。まずは空気じゃろう。空気がなかったら、人間は生きていきやえんとよ。それから他人の心も見えんじゃろ。心は大事じゃっとにさ。それから一番大事かとは神さま。神さまは見えんばってん、365日、一日24時間ずっと人間ば守ってくれとるとよ」
本当にそうだなと思う。
現実的な話になるが、父は下着について一家言を持っていた。
明治生まれで九州男児の父が、女の子3人に常に言っていたのが「下着はさ、他人からは見えんばってん、見えんからこそ、いつもよかとば着とかんばよ。上だけ飾っとってもさ、いざという時、たとえば事故かなんかにおうて病院に運ばれた時、みすぼらしか下着で横たわっとったら、父ちゃんも母ちゃんも恥ずかしかけんね」であった。
だから私たち3人姉妹は、上に着る物より、下着の方に重きを置いて暮らしている。
亡き弟に生前その話をした時、弟も「ぼくも父ちゃんに同じことを言われた。だから下着には気を使ってるよ」と教えてくれた。
この話は女子大の講演の時によくするのであるが、若き女性の心に響くのか、いい話を聞いた、自分も下着の方にお金を使いますと、後日、お便りをいただく。
父が帰天して今年で51年になるが、この言葉はずっと私や私のきょうだいを支えてくれている。