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夏の思い出

シスター山本 久美子

今日の心の糧イメージ

 海の近くで育った私は、思春期を迎え、人生の目的や生きる意味を考え始めた頃、夏の夕暮れ、開け放った窓から聞こえて来る波の音を聞き、入って来る爽やかな自然の潮風にあたりながら、一人、物思いにふけるのが大好きでした。そんな時、自分の心に自然に起こってくる心の想いや感情を、日記のようにノートに記したり、手紙を書いたりするのが私の日課でした。

 今、思い出しますと、あのノートや手紙は、私の心の神様への手紙、祈りだったように思います。自然の恵み、海と潮風を感じ、潮の香りに包まれ、本当に心地良く、心が満たされる時でした。特に文才があったわけでも、国語が得意だったわけでもありません。作文は苦手だと思い込んでいましたが、その時は別でした。自ずと心から溢れ出る言葉でペンを走らせるような体験を度々しました。

 ともすれば、学校の成績や評価、外観や容姿等、他人との比較の中で人間の価値をはかり、なかなか自分にも自信が持てずに悩みがちだった私にとって、本当に神聖で尊い時間でした。その時間が、私を、自然に自分を包み込んでくださる何か大きないのちの存在に向き合わせ、導いてくれたように感じます。

 こうしてふり返っているだけで、今も、味わった想いや感覚が、不思議に私の中によみがえってきます。そして、些細なことに傷つき、辛くて、思い悩んだ時期がいとおしくも感じます。

 詩人リルケは、「秋の日」という詩歌の中で、夏の日をふり返って、「偉大な夏」と歌いましたが、私も、あの夏の時間は偉大だったと感じます。神様の大きな計らいの中で、創造主なる神様に語った偉大な夏の日に感謝と賛美を捧げたいと思います。