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よろこび

服部 剛

今日の心の糧イメージ

 それはダウン症をもつ息子が通う特別支援学校の授業参観でのことでした。その日は妻に予定があり、私が代わりに学校へ行きました。

 息子はダウン症児の中でも特に発育がゆっくりで、重複障がいクラスにいます。先生が個別に付き添って指導してくれています。

 ――とんとん

 私が教室のドアをノックして入ると、息子は私に気づくやいなや、先生の腕をふりほどき、ニッコリ笑みを浮かべて私の方へトコトコと歩いてきます。8歳になっても言葉を話せない息子ですが、健常のお子さんと同じように<パパが僕を見に来てくれた!>と言わんばかりに、その顔には歓びがあふれていました。

 日頃からママに甘える息子を見ていると<ママが一番でいい>と思います。

 ただ、この日の場面で<パパのことも認識しているのだな...>と知ったとき、私はこれまではっきりと分からなかった〝幸せ〟というものが、息子を通して視える感覚になりました。

 その後、広場に出て、他のクラスの子供たちと一緒に音楽に合わせて体操をする時間になりました。みんなと同じように手足をうまく動かせない息子にぴったり寄り添う先生の姿から、<指一本でも合わせられるように>という願いが伝わってきて、見学している私の目には涙が滲みました。息子に温かいまなざしを注ぐ先生に、目には見えない〝愛〟が視えるようでした。

 学校や放課後等デイサービスに通う日々の積み重ねにより、息子にも小さな変化がありました。我が家のささやかな祭壇に置いているものの中から、なぜかいつも「幼いイエス様を抱くマリア様の母子像の写真」を手に取り、床に置きます。お気に入りを選べるようになった息子の成長を、これからも私と妻で見守りたいです。