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よろこび

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

 20年ほど前に私は4つの教会を3人の神父で、共同して担当していました。初めは、3人で一つの教会で暮らしていたのですが、教会の管理の問題で私は、そこから電車で20分ほど離れた教会に一人で住むようになったのです。

 そしてしばらく経つと、ほかの2人の神父に比べて私は朝が弱いことがわかってきました。時々寝坊をして、朝のお務めであるミサという祈りに遅刻するようになったのです。

 それで、私は一人の早起きの主婦の人に頼みました。「すいません、私はどうも朝が弱いようなので、朝の6時に電話で呼び出していただけますか?私はそれを聞いて、受話器を1度取ってすぐに受話器を戻します。私が電話を聞いたというしるしです。電話代は私が払いますからお願いします。」「それぐらいはたやすい御用です」とその主婦の方は私の頼みを聞き入れてくださったのです。そのおかげで、私はしばらく、朝の遅刻はなく、皆に迷惑をかけずに順調に生活をつづけました。

 ところが、ある朝私はとても疲れていたらしく、その電話に出ることなく、はっと気が付いた時には、遅刻寸前でした。そして急いで洗面をして出かけようとしたその時、玄関のベルが鳴ったのです。この忙しいときにと思って玄関の戸を開けたとたんに、いつも朝目覚まし電話をかけてくださる主婦がそこに立っていました。そして「あっ!神父さん。無事だったのですね。」とその場にへたり込んでしまいました。

 目覚まし電話の了解の合図が無かったために、私が倒れたと思い、急いで電車に乗って駆け付けてくださったのです。その時、「私は、信者さんから大切にされている」と身震いするほどの感謝の喜びに溢れ、私の思い出の宝となったのです。