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祈りのまなざし

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

 ローマ教皇フランシスコに、あるとき子どもが「教皇として働く中で、何が一番楽しいですか」と尋ねた。教皇は、「みんなと一緒にいることだよ」と答えた。人々と出会って一緒にいること。一人ぼっちのときは、祈りの中でイエス・キリストと一緒にいること。ともかく、誰かと一緒にいることが一番の楽しみだというのだ。

 昨年11月、フランシスコ教皇は来日し、各地でたくさんの人と出会った。わたしも東京でお会いしたが、確かに教皇は、人びと、とりわけ若者や子どもたち、病気や障害を持った人たちと会うとき、本当にうれしそうな笑顔を浮かべていた。心の底から湧き上がって、相手の心に深く沁み込むような、優しさとぬくもりに満ちた笑顔だった。笑顔そのものが、教皇からわたしたちへの一番のメッセージではなかったのかとさえ思う。教皇の笑顔は、無言のうちに「あなたにあえて本当にうれしい。あなたは、本当に大切な、かけがえのない存在です」とわたしたちに語りかけていた。

 教皇来日のテーマは、「すべてのいのちを守るために」ということだった。日本に到着してすぐ、教皇は日本の教会の代表者たちに向かって、「すべてのいのちを守る」とは、人びとを「祈りのまなざし」で見ることだと語った。「祈りのまなざし」とは、目には見えないものを見通すまなざし、相手の中に宿った、神々しいまでに尊いいのちの輝きを見通すまなざしのことだ。「祈りのまなざし」で見るとき、わたしたちは相手の中に神を見る。そのとき、わたしたちはその人のかけがえのなさに気づき、その人のいのちを守らずにいられなくなる。わたしたちにほほ笑みかけるとき、教皇の目は、わたしたちの中に神を見ていたに違いない。