長く児童図書出版社の編集者・社長職に就かれ、児童文学者としてもご活躍の松居直さんが、なぜ子どもの本に携わるようになったか、お聞きしたことがあります。
その理由は、松居さんが幼児の頃の、お母さんとの楽しい思い出があったからです。
松居さんは6人兄弟の5番目で、当時お母さんは朝から晩まで忙しく働いていました。
そんなお母さんが夜寝る前に、ふとんの中で絵本を読んでくれました。いつも先に寝るのは仕事の疲れでぐったりしていたお母さんのほうでしたが、その時間は松居さんにとって、一日のうちで一番楽しい時間だったのです。それは大好きなお母さんと共にいて、お母さんの愛情をめいっぱい感じることができたからです。
この子どもの頃の幸せな経験が松居さんの仕事の原点となり、原動力となったのですね。
私が大人になって絵本に興味をもち絵本を書き始めたのも、思い起こせば私の幼児体験にも同じような温かな思い出があったからです。
絵本を読み聞かせするとき、親子は同じ時間、同じ場に共にいることができます。そうして、絵本を通してふれあい、互いに愛情を交流させる機会を得ることができるのです。
その時間は子どもにとって、忘れがたい貴重な思い出になるに違いありません。
ところで、神様は私たちと共にいて、同じようなことをしてくださっています。
もちろん絵本の読み聞かせではありませんが、この世界の現実の物語を通して、私たちに語りかけてくださっているのです。
昨日起こった物語にも今日起こる物語にも、共にいらっしゃる神様の働きかけがあります。
現実の様々な出来事を通して、いつも私たちに豊かな愛を示してくださっているのです。