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わたしの今の役割

服部 剛

今日の心の糧イメージ

 この春、私はインターネット放送のテレビ番組にゲスト出演しました。詩人の活動を紹介する1時間の番組で、生中継の緊張感があるひと時でした。番組は私の20年余りを振り返る企画で、「言葉の表現とは何か?」というテーマを語りました。その放送では語りきれなかったことがいくつかあり、今、思い返しています。

 今年で45歳になりますが、最近は自分より若い世代と交流することが増えました。私はこれまでの経験を生かしながら「平らな目線」で若い人とかかわるよう心がけています。

 若い仲間たちとイベント活動を行っていますが、その一回目は心に残るものとなりました。

 イベント当日、主要メンバーの女性詩人から「今朝、おばあちゃんが息を引き取り、参加できないかもしれません...」という連絡が入りました。私は内心、動揺しましたが、「今はただ、おばあさんの魂が安らかであるように祈ります。イベントのことは気にしないで」と伝えました。それぞれに整うことができたのか、開演する直前、彼女は会場に駆けつけてくれました。

 実は、私生活で大きな岐路にいた彼女は、数日後に都内から遠く離れた町へ引っ越し、〈新たな日々を生きよう〉と決意していました。そんな彼女と別れを惜しむ多くの仲間が会場に集いました。

イベント終盤、朗読の舞台に立った彼女に、司会の僕が「今の気持ちは?」と聞くと、「みんな、ありがとう。愛しています!」と語り、会場は彼女を励ますような温かい雰囲気に包まれました。

 この場面から、言葉を共有するひと時には、マイナスの出来事さえもプラスに変え得る力があることを実感しました。

 私はこれからも、人と人がふれあう言葉の共有空間を、仲間と共に創っていきたいです。