エッセイストとして講演しはじめたころ、私は壁にぶつかりました。人見知りな面があり、大勢の人の前に出ると戸惑ってしまうのです。スポットライトを浴びて拍手を聞いた瞬間に帰りたくなる。最初の一年はそんなふうでした。
ところがだんだん、講演を聞いたみなさんが、私のメッセージをしっかりと受信して、それぞれの人生に生かそうと決意を新たにしてくれていることが分かってきました。そして、「ほかの人たちにも勇気を与えてください」と励ましてくれるのでした。
そんな声を聞くうちに、私は気持ちが変わってきました。
「自分には伝えたいメッセージがある。みんなと分かち合いたいテーマがある。エッセイでも講演でも、それを言葉にするのが私の仕事。ならば人前で戸惑っている場合ではないよね。しっかり言葉を投げて、受け止めてもらわなきゃ」
それ以来、講演で戸惑うことはなくなりました。色んな反応に驚いたり、後から「あのときこうすれば」と思ったりすることはありますが、もう帰りたいとは思わなくなりました。
そんなある日、新約聖書、ルカによる福音書12章12節の言葉にあらためて出会いました。
「言うべきことは、聖霊がそのときに教えてくださる」
なるほど、講演ではメモの通りにいかないことばかりだし、エッセイを書いていても思わぬ展開になったりします。でも、テーマへの思いを伝えるという私の役割は変わっておらず、仕事は進んでいるのです。こうして私はこの役割を理解し、技術を磨いておけば良いのだと悟りました。そこから先は、神様が一緒に働いてくださるのだと。
ほかの場面で別の役割が分かるときも同じです。きっと、これが私の役割の見つけ方なのでしょう。