教会の主日のミサに行くと、白髪をきれいに整え、前髪をピンで留めて、静かな佇まいの小柄なアサさんが席に座っている。私はときどき、アサさんの席の隣に座ることがある。アサさんは、手さげ袋の中からビニールの袋に入れた写真を出して、聖歌集のそばに置く。ビニールのシワをていねいに手で伸ばして、その写真のお方と一緒にミサに与っているようだった。ある時、アサさんに思い切って聞いてみた。
「いつも写真をもってミサに、与っていらっしゃいますね」
「ああ、これは亡くなった主人です。マリアさまに出会わせていただいたのですよ」
それから、お二人の出会いを話してくださった。
アサさんは若い頃から、コルベ神父さまが創刊した月刊誌を毎月購読していた。その月刊誌に一般の男性が記事を投稿していて、その内容に心を惹かれた。アサさんは、その晩、マリアさまからその方に「手紙を出しなさい」と促されたように思い、月刊誌宛に手紙を出した。編集部の方がその男性に手紙を転送してくださり、文通が始まった。2年間文通をしてから、1度会うことになった。二人とも遠く離れたところに住んでいたので、中間地点で会った。その後も文通をしているうちに、「マリアさまが出会わせてくださった方」とお互いに確信し、結婚することになった。結婚生活は、子供にも恵まれて幸せだったという。
これから二人で老後をという時に、夫は帰天した。
以後ずっとアサさんは天国のご主人の写真と一緒にミサに与っている。
アサさんの隣に座っていると、この世の旅路を歩み終え、いつか天のふるさとに帰るという希望が湧いてくる。
そして、何よりも、マス・メディアの生きた宣教を見る思いがするのだ。