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母のぬくもり

村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

 聖書では「マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思い巡らしていた。」という記述を度々目にします。

 イエス様の誕生をみ使いから聞いた羊飼いたちが聖母子を訪れた時に始まり、神殿での少年イエスのエピソードの時も、そしてカナの婚宴の時も、そうなさったに違いありません。神の御子に対する絶対の信頼をもっていらして、何か出来事の度に受胎告知でのご自身のお答え「お言葉通り、この身に成りますように」(ルカ1・38)に立ち返られて、来し方を思い巡らしていらしたのでしょう。

 既に天国の住人ですが、私の母も静かな優しい人で、身の回りでいろいろな出来事があっても黙って心に納めてしまうタイプでした。祖母がはきはきした人で、何でも家族に報告しては感想を求めるタイプでしたので、彼女の喜怒哀楽に家族が巻き込まれることがありました。そんな時、母の静かなほほえみに安堵し、明日に向かうことが出来ました。

 ことに、ミッションスクールの小学校に通学していた私が、祖父母の希望で家業の医者を継ぐべく、国立の中学を目指した時、私を信じて、全てを心に納め、幼いころからの私の成長に思いをはせつつ、優しい微笑みで見守ってくれた母の姿が懐かしく思い出されます。私はこの母のぬくもりに支えられて受験に成功、合格することができました。

 10年余りが過ぎ、私自身が母となり娘たちを育てる中で、何度となく聖書を開き、マリア様に倣う努力をしたものです。神様が授けてくださった我が子を信じ、誕生の日の感動を思い起こし、心の中でその成長を反芻すると、自然に微笑みが浮かびます。

 きっと子供たちも「母のぬくもり」を感じたことでしょう。