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父のぬくもり

古川 利雅 神父

今日の心の糧イメージ

 お母さんが夜なべをして、寒いだろうと思い、自分のために手袋を編んでくれた。手袋が田舎から届いて、囲炉裏の匂いがした。昔懐かしい歌の内容ですね。お母さんが自分のため、一生懸命編んでくれた姿を思い浮かべ、お母さんのぬくもりも感じたことでしょう。

 自分を大切に想ってくれる人、それはお母さんだけではなく、お父さんもおられますね。お父さんのぬくもりはどんなもの。

 ふと亡くなった父のことを想い浮かべてみました。

 父と言えば手作り料理の思い出。家族で食べる日曜の夕食に「茶碗蒸し」をお願いすると、殻付きの銀杏を炒って、硬い殻を割り、薄皮を剥き鶏肉等の具も用意し、時には銘々で食べる器で、また時には大きなガラスのボールで「茶碗蒸し」を作ってくれましたね。表面に細かい泡ができない様、「す」が立たない様にしながら、美味しい茶碗蒸しを作ってくれました。

 美味しくて、いつもペロッと平らげていた私たち。食べ終えて、茶碗蒸しの欠片がついた入れ物。時間が経つにつれて、入れ物はどんどん冷め、冷たくなっていくけれど、そこには美味しい茶碗蒸しだけでなく、暖かな父の心、父のぬくもりがある様に、今感じています。

 父は既に天に召されましたので、今はもうこの「茶碗蒸し」を食べることはできませんが、懐かしい「茶碗蒸し」を思い出すとき、そこにある、今もある、父の暖かなぬくもりを感じ、父の存在、神の御元にいる父を想うことができます。

 お父さんのぬくもり、皆さんにはどの様なものがあるでしょう。探してみると新たな発見があるかも知れませんね。私たちへの暖かな心、暖かな想い、ぬくもりを感じ、そのぬくもりに温められながら、新たな一日を歩んでゆきましょう。