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父のぬくもり

小川 靖忠 神父

今日の心の糧イメージ

 「り~ん、り~ん」。けたたましい音が鳴り響きます。朝の5時起床です。とはいっても、まだ寝ていたい気持ち。そのまま寝ていると「靖忠、時間だよ」。隣で寝ている父親から声がかかります。毎朝のお決まりの情景です。わたしが病気でない限り、毎日続いた父と子の朝のプログラムでした。

 毎朝5時30分の山口司教のミサの侍者をしたくて、父親と約束していたのです。毎朝しっかりと起こしてくれました。今になってみますと、実に、ありがたいことだったと思っています。

 しかし、父は決してミサに行くことはありませんでした。それでも、子どもが行きたいといえばちゃんと手伝ってくれるのです。

 聞いたことはありませんでしたが、父も小さい頃は侍者をしていたのでしょうか。そんな気がしてなりません。わたしが神学校に行きたいと言い出した時は、不安からか、司教に相談に行ったと、後で聞きました。

 このような父親でしたが、かなりの「太っ腹」でした。青年たち、若い壮年の皆さんがよく家に来ては、父親と議論を交わしていました。最後は、若い彼らに激励の言葉をかけて、「思い切って行け」と叫んでいたように思います。「後は年寄りに任せておけ」と。酒の席での話なので大したことはないと思っていましたが、教会内に青年会が立ち上がり、若者同士のカップルが何組も誕生したのです。

 その父親が、やっとミサに行き始めたのが、わたしが父のために祈りはじめて8年目でした。母から電話がありました。この時、父親と、その存在の温かみを感じたのです。

 父のぬくもりは、日頃は表に出てこない、秘められたものなのかなとしみじみ思ったものです。