▲をクリックすると音声で聞こえます。

わたしの支え

新井 紀子

今日の心の糧イメージ

 甥と姪の話をします。二人は一昨年、父親を亡くしました。数年前には母親を亡くしていました。父親の葬儀で会ったとき、二人は寄る辺を急に失い途方に暮れているように見えました。

 〈二人の支えになってあげなくては〉私はそう思いました。

 それからは、季節ごとに電話をしたり、メールをしたりするようになりました。昨年、次々と台風が上陸すると、私は二人が心配で被害がないかと電話する日々が続きました。

 ところが昨年の9月のことです。私たち夫婦が暮らす北海道で大きな地震がありました。胆振東部地震と名付けられた地震は、山崩れを起こし、たくさんの方が亡くなりました。幸い、我が家に被害はありませんでした。しかし、朝起きると停電になっていました。我が家は森の中にあるため、強い風が吹くと木が倒れ停電することがしばしばあります。今回もそんな不都合が起きたのだろうと思いました。すぐに回復するはずだと思いこみ、あまり心配もしませんでした。その時、私の携帯電話が鳴りました。姪からでした。

 「おばさん。大丈夫ですか。ニュースによると北海道は全道的に停電だそうです。携帯は節電モードにしておいてください」

 私は驚きました。そんな大変なことになっていたなんて。すぐに節電モードにしました。断水に備えて、飲み水を汲み置いたり、風呂に水をためたりすることができました。

 甥からはメールが入りました。

 「仕事で出張中です。北海道で地震があったようです。大丈夫ですか。何か困っていることはありませんか」

 支えてあげているとばかり思っていたのですが、逆に支えられていたのです。甥と姪のお陰で我が国初のブラックアウトを乗り切ることができたのでした。