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わたしのクリスマス

黒岩 英臣

今日の心の糧イメージ

もう60年以上前の話になりますが、私はボーイソプラノが主役であるオペラに、その主役として出演するように、抜擢されたのでした。

 こんなことはどう考えても、実に確率の低い、殆どあり得ないような話なのですが、実際こういう事が、私の身に起きたのでした。

 メノッティ作曲のこのオペラは、足の不自由な羊飼いの少年アマールとその母親の暮らす貧しい小屋に、東方から輝く星に導かれてベツレヘムに生まれるはずの救い主イエス・キリストを礼拝するためにやってきたという、3人の王、カスパール、メルキオール、バルタザールが一夜の宿を頼むというストーリーです。これを聞いた少年アマールは、自分も、自分の捧げられる全てで、唯一の松葉杖をイエス様に捧げたいと、王たちに同行することを願い出ました。その時、奇跡が起き、アマールの患っていた足が癒えた、という感動的な物語でした。

 さて、私には、この時の東方で輝いた星が、何年か後に、私をクリスマスのミサに初めて列席するように導いてくれたのだと思っています。

 そこから、キリスト教の教えに魂を挙げて信仰宣言出来るまでには、神の愛を知って深く大きな喜びを味わうとともに、とても信じ切れない、あるいは、自分の理性では到底把握できない事から、疑いも苦しみも感じていました。

 

 それに比べて、妻は、中学時代に自分から進んで色々な教会を巡り、カトリック教会に出会った時、ここが私の求めていた場所、と確信したというのです。私が思うには、これは、主からついておいでと言われた弟子たちが、今の今まで漁に使っていた舟や網の一切をおいて主に従った、というあの姿に近く、神様だけが説明できる素晴らしい出来事だと思うのです。