そういえば、神父の卵の養成で那須にいた頃は、東京から自動車を運転して、目の前に茶臼岳が見えると、「帰ってきたんだ、また神学生たちと一緒に生活、がんばらないと」という思いがこみ上げてきましたし、東大阪に住んでいた頃は、生駒の山並みを見ると、「もう休暇は終わり、これから仕事だ。」と、心がリセットされたことを思い出しました。
人間には、見慣れた日常という環境があります。そして、この見慣れたものが、次の1歩を生み出す元気を与えてくれるということがあります。
このように考えていると、「オー・ゴッド」という映画の一場面が思い出されました。
ジョージ・バーンズ扮する神様が、ジョン・デンバー扮するスーパーの副店長に現れたとき、その副店長は、神様が現れたとパニックに陥りました。そこで神様は言います。「いつものように、ひげを剃りなさい。いつものことをやっていると落ち着きますから」。それで副店長はひげを剃りながら、落ち着きを取り戻し、神様と話すことができました。
山という、自然を映し出す風景が、その風景を見ながら生活する人々の、些細な日常生活に生きる基盤を与えていること、すなわち、私たちを支える基盤を自然の中に見出すのです。