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自然とわたし

三宮 麻由子

今日の心の糧イメージ

私は外遊びが大好きな子どもでしたが、学校の遠足や移動教室で自然の中に入る授業は、それほど好きではありませんでした。

その感覚が大転換したのは、大学院時代に小鳥を飼い始めてからでした。最初は小鳥に話しかけるのがちょっと恥ずかしいと思うほど動物とのかかわり方が分からなかったのですが、彼らの天真爛漫なコミュニケーションに応えたり、美しい囀りに口笛で返事をするうちに、すっかり小鳥の友達気分になってしまいました。私が遊んでいるようでいて、実は小鳥たちに付き合ってもらっているのだ、ということも分かってきました。

彼らが暮らしていた自然界はどんなところだったのだろう? そう思って野鳥の観察会に行ってみると、子ども時代からは想像もできないような自然への思いが湧いてきたのです。

鳥たちが飛び、餌を探し、雛を育て、巣を作る里山や森、天敵たちが目を光らせる地上が私の世界となり、そこで起きている環境破壊や森林放置、密猟に衝撃を受けました。

その後、日本野鳥の会創設者の中西悟堂氏の本を読破し、「鳥が教えてくれた空」を書いてエッセイデビューしたのでした。

なぜ小鳥が私をそこまで変えたのでしょう。それは、彼らが私と対等な「種」として付き合ってくれたからです。体が大きいとか、餌をくれるというある種の上下関係に囚われず、自然界に共に生かされた生き物同士として私を扱ったからです。

自然界に入ると、私は裸の命になります。心の底まで自然に委ね、「今」を感じ、人間の知恵や技術をはるかに超える大きな力を感じます。その感覚は、私の体の千分の一の小さな小鳥たちに教えてもらった大きな自然のレッスン。そして、神様のメッセージでもあるのでしょう。