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自然とわたし

シスター山本 久美子

今日の心の糧イメージ

田園に囲まれ、のどかで豊かな自然が広がる地で、私は育ちました。

田植えの季節になると、冬の間休んでいた生きものたちも一斉に動き出し、つくしが生え、レンゲやたんぽぽの花が咲き、春の訪れを感じさせてくれました。水を湛えた田んぼが鏡のように輝き、青々とした稲が広がると、メダカやおたまじゃくしが活動し、にぎやかな蛙の大合唱が聞かれるようになります。

夏になると、強い日差しを浴びて、稲はぐんぐん成長します。やがて、緑の波に変わって、秋風に波打つ、たわわに実った黄金色の稲穂は頭を垂れ、乾いた稲の匂いを立てるようになります。稲の刈り取りが終わると、地は静かに力を蓄え、冬の寒さに耐えるように水田は休みの時を過ごします。

このような季節ごとの変化を、今、思い出すと、まるで私たちの人生を語ってくれていたように感じます。

  

海も近かったため、夏の夜は、窓を開け、遠くから響く波音に、心地よい潮風に当たりながら、天地の創造主に自然に心が向けられ、私は、1人静かに祈り、賛美の手紙をしたためたものでした。四季折々の移ろいを見せるそれらの美しい風景や環境は、私の原風景、創造主なる神と私との出会いの原点です。

今では、たくさんの家が建ち並び、人間の都合で、なつかしい風景もすっかり変えられました。変わり果てた様子を目の前にすると、いつの間にか子どもらしい純粋で自然な心を失ってしまった大人の自分自身を見るような思いがします。

しかし、私の心の中で今も生きているなつかしい原風景は、神と私との本来の関係を思い起こさせ、私のうちに、神が創られた世界の美しさを取り戻す希望を呼び起こしてくれるのです。