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わたしの好きなみ言葉

服部 剛

今日の心の糧イメージ

私が初めて就職したのは、老人ホームの介護職でした。当時の私にとって介護の職場は未知の世界であり、覚悟をしていたものの、何ともいえぬ不安な気持ちを抱えながら初出勤の日を待っていました。

当日が近づくにつれて心の重圧は増して...私は親しい神父様に連絡し、司祭館の部屋で思いを打ち明けました。神父様は私の話を聞き終え、瞳を閉じて祈った後、手にした聖書をすっと開き、ヨハネによる福音書の14章を静かに読み始めました。

        

〈あなたがたのために場所を用意したら、戻って来て、あなたがたをわたしのもとに迎える。こうして、わたしのいる所に、あなたがたもいることになる〉ーーー聖書を閉じた神父様は何かを確信するように、私に語りました。「あなたは最初、苦労するかもしれません。しかし、この御言葉から感じるのは〈逆転の時が来る〉というメッセージです」。その言葉に私は〈挑戦してみよう...〉という決意を心の中で呟いて、家路に着いたのでした。

特別養護の重度の障がいをもつ高齢者の介護は想像以上にハードで、2年間悪戦苦闘した末、挫折が待っていました。自分の至らなさから失格の烙印を押され、同僚の誰とも話せない屈辱の日々が続きました。

やがて、上司の厚意により自分の性に合うデイサービスの部署に異動して15年働き、介護職を卒業してからは文筆・司会・イベントの企画等、徐々に階段を上るように自分らしさが花開いていきました。

とはいえ、現在の私がどんなに充実していても、たった1人で外のベンチに腰かけて休憩時間を過ごしたあの頃の自分と、信じ続けたイエスの〈あなたがたのために場所を用意しにいく〉という御言葉を忘れずにいよう、と心に誓っています。