人の一生とは、人が目覚め、自分自身を知るまでの長い時間のことなのではないか、と私は思っている。誕生したばかりの無垢な瞳で世界を見て以来、人は何度も目の覚める思いをしては、生きることを深めていく。その道のりを進むために、人には長い時間が与えられているような気がする。
私たちは一生をかけて目覚めていく。目覚めて世界を見つけ、生きることを見つける。何と恐ろしく、同時に素晴らしい時間だろうか。そして最後に見つけるのは自分自身なのだ。
私たちには、様々な仕事において、文字通り我を忘れて努めなければならない時期がある。この時ばかりは、自分自身を見つけるどころか、自分の健康も顧みず、食事すら忘れてしまう。自分自身に出会えるのは、そんな経験の後の、締めくくりの時期かもしれない。もっとも重要な人生の課題が、最後に私たちを待っているのである。
暖かい光が私たち一人ひとりの上にある。初めて世界を見た光の瞬間を人は皆、与えられていたのだ。それは輝く恵みではなかったろうか。ささやかでも進んで行きたいと思う。光とともに目覚め、知ることへ。