2018年07月27日の心の糧


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新井 紀子

今日の心の糧イメージ 函館郊外の大沼に移住して友達になった敏ちゃんの話をします。

彼女は結婚して大沼に住むようになりました。夫は山に入って木を切る仕事をしています。農地ではお米を作っています。子供は3人生まれました。

子供たちが育ち盛りになった頃、彼女は決心しました。農薬がかかった野菜を毎日食べている子供たちに、無農薬のおいしい野菜を作ろう。

どうしたらたくさんの種類のおいしい野菜が作れるのだろう。彼女は知人の野菜農家に聞いて回りました。そして分かったことがあります。肥料と土づくりに秘訣があったのです。彼女は野菜の土づくりに没頭しました。肥料にはミミズがたくさんいる、よく発酵した堆肥が良いのです。夫が飼っていた北海道の道産子馬の敷き藁と糞。彼女が飼っていた烏骨鶏という鶏の糞。これを混ぜて良い堆肥を作ることにしました。春には適度な水分を補給するために、青草を刈り、馬や鶏の糞と混ぜます。秋には発酵を促すために天地を返すのです。その堆肥を翌春に土と混ぜます。そうしてできた畑に野菜の種や苗を植えるのです。土が良くなるにつれ、おいしい野菜がたくさんできるようになりました。家族だけでは食べ切れないほどです。

彼女の夫は、「こんなおいしい野菜、地域の人たちにも食べてもらおうよ」と、とんがり屋根の小さな小屋を建て、屋根に大きく「敏ちゃんの店」と書きました。無人の100円ショップの誕生です。

もぎたてのトマトやナスやキュウリ、枝豆もあります。すべてその朝採ったものばかりです。

「子供のために始めた野菜作りが、今では地域の人たちにも喜んでもらえるなんて」

野菜作りに目覚めた敏ちゃんは、嬉しそうに笑います。