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目覚める

服部 剛

今日の心の糧イメージ

私のこのお話が放送される頃には、ダウン症を持つ息子の周は小学校に通い始めていることでしょう。

周は特別支援学校に入学する予定です。

実は、私と妻の願いであった、私立の養護学校を周は受験しましたが不合格となり、親として気持ちを切り替え、「結果オーライ」という言葉もあるように、特別支援学校への入学に〈これでよかったのかもしれない〉と思うようになってきました。確かに、受験した養護学校は障がいのある子供を大切に育む素晴らしい学校ですが、実際に通うとなると近隣ではないため、毎朝、結構な時間をかけて通学しなければなりません。〈周に良い教育を施したい〉という一念でしたが、いまだ幼い周の身を考えると、内心はホッとしているところもあったりします。

きっと親というものは体験を重ねながら子供と共に成長するのでしょう。私は今、「望む所に受からなかったことの深い意味」に気づき始めています。

私の子供の頃、母の口ぐせは「息子を信じている」でした。私も人の親となり、子供を無条件に信じることの大切さを感じています。周が本当に縁のある学校で自分らしい笑顔を輝かせることを、親として信じたいと思います。

6年前、周が生まれてまもなくダウン症の告知を受けた時、私たち夫婦の目の前は真っ暗になりました。しかし、私の実家で両親とゆっくり語り合った後、朝陽の射す部屋で一人、必ずこの経験を糧にして文筆の道を歩もうと決意した日を、私は忘れたことはありません。

そして、この春、その思いの結晶として、周のことを書き記した詩集を出版するに至りました。私たち家族の想いがこの本を通じて読んでくださる方々に届くことを心から願っています。