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目覚める

阿南 孝也

今日の心の糧イメージ

グローバル化が叫ばれている昨今ですが、海外の大学に留学を希望する日本の若者の数が伸び悩んでいると聞き、とても残念なことだと思っています。高校卒業と同時に海外の大学に進学することは、英語での授業が理解できるだけの語学力を身に着けるという面からも、また年間数百万円と言われる授業料や生活費の面からも、ハードルが高いと言わざるを得ません。ですから、私は日本の大学を卒業した後に、奨学金を得て海外の大学院に進学するという選択肢を持つ若者が増えてくれることを期待して、生徒たちに推奨しています。

海外の大学への進学に際して、高校での学業成績の提出が要求されるようです。卒業から数年を経て、毎年何人もの卒業生から英文の成績証明書の発行依頼が届きます。卒業生たちが、新たな挑戦をしようと歩み始めていることを嬉しく思いながら、一枚一枚の成績証明書に、校長名のサインをしています。

留学を希望する卒業生たちのことです。高校在学中から英語の成績が良好だった生徒が多いのは確かです。ところが、語学が苦手でやっとのことで単位を取得し卒業した生徒も珍しくないのです。そのような時、驚きと嬉しさが込み上げてきます。彼らは大学の4年の間に、どのような経験や出会いを得たのでしょうか。語学習得にも目覚め、海外という新しい環境に身を置く決意をした彼らに敬意を払い、成功を祈りながらサインをします。

子どもたちが神からいただいた賜物に気づき、磨き伸ばすよう導くことは大人の大切な役割です。高校在学中には気づかせてあげることができなかったかもしれませんが、卒業後の飛躍の土台作りに少しでも関わることができたとすれば、教師冥利に尽きるというものです。