しばらくすると、「おやつにしようよ」と声がかかりました。でもばあさまは庫裡のなかには入りません。
おやつはどこかな?と思っていると、ばあさまがおイモの葉っぱを三角形にまるめ、そこにクワの実を摘んでは盛って、「あんたもお食べよ」と、1粒ずつ口にいれています。わたしもさっそくばあさまの真似をして葉っぱのお皿にクワの実を盛りました。
「いただきます」
ちょっとブルーベリーみたいに甘酸っぱくて美味しい!
「ねー、わたしたちのいのちを生かしてくださるのだから、いただきます、ってすてきなご挨拶」ぽつりとひとこと。
あそこのお寺にさとりをひらいたばあさまがいる。そんなうわさが広まって、いろんな人が会いにくるようです。
でもみたところ、ごく普通のばあさまなのですけれど。
さて、クワの実のおやつをいただき、草むしりも一段落すると、ばあさまから思いがけないことをいわれました。
「あんたといるとたのしいよ。こんやは泊まっていきなさい」
え?私なんにもばあさまをたのしませるようなことしてないのに。
ふしぎな引力にひかれるように、ばあさまと一夜をともにしたのです。といっても、「さあ寝ましょ」といって、ばあさまは敷きふとんをくるくるまるめて、そのなかにすっぽりくるまって寝てしまい、わたしもしかたなくそのお隣でミノ虫状態。
ばあさまはなんと野性の子!