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新たな一歩

堀 妙子

今日の心の糧イメージ

ある女子大のお掃除のおばさんだったお方の話を友人に聞いた。それから、生きていくことって辛いと思うとき、この場に私がいてもいいのかと疑問に苛まれるとき、毎朝、起き上がり、新たな一歩を踏み出す力を得ている。

そのお掃除のおばさんは、長い歳月、女子大で学生たちがいない時間帯や、休みの日に働いていた。おばさんは作業服を着て、歯もほとんどなく、黙々とお掃除をしていた。教職員の方々も学生も、このお掃除のおばさんには単に挨拶をする程度だったと思う。その間、おばさんは、あるシスターに出会い、この人にすべてを託そうと決意し、ご自分のすべての貯金は、死後、女子大に寄付をする手続きをとっていた。

 

そのおばさんが亡くなると、その貯金は、女子大生の為の、返済の必要がない奨学金になった。シスターに託された貯金が一億円。

ただ黙々と働き、ひっそりと生きたおばさん。

死後、発表され、今、多くの学生がその恩恵を受けている。

このおばさんの話は、私の人生のいろいろな出来事の中でも衝撃的だった。今の世の中は、「結果を出す」「世界的な存在になりたい」などの言葉が飛び交っている。日々、結果を出すために、資質や才能とともに、並大抵ではない努力や自己犠牲を払っている人々に対して、私は心から尊敬をする。しかし、私にとって、このおばさんの生き方は、どのような名声や地位を得た方々よりも心に響く。

このお掃除のおばさんの沈黙、この人ならと託されたシスターの沈黙。この世は天国に行くための訓練所なのだと思った。無名の存在として生きた、お掃除のおばさんが天国に着いたとき、すぐにマリアさまに出会われたと、私は信じています!