これは、もっともなことだと思う。暴力や裏切り、ひどい言葉などによって相手から深く傷つけられたとき、相手を簡単にゆるせるものではない。心の傷がひどく痛んでいるときに、傷つけた相手のことをゆるせるはずがないのだ。傷つけた相手を忘れることも、怒りや憎しみが湧き上がってくるのを止めることもできない。それが人間の限界だと、素直に認める必要があるだろう。
わたしたちには、自分が受けた心の傷を癒す力がない。それゆえ意思の力だけで相手をゆるすこともできないのだ。相手をゆるせない自分を責めるのは、むしろ傲慢と言っていいだろう。ゆるしは人間の力を越えたことであり、むしろ神の領域に属している。謙遜な心で、「どうか、心に受けた傷を癒してください。いつか相手をゆるすことができますように」と祈りたい。