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ゆるし・いやし

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

私は、小さい頃とても我が儘で、癇癪持ちでした。特に弟に対しては、何か失敗したり、私のものをいじられると大声を上げて咎めたものです。少し大きくなると、私の中でもこのままでは駄目だ、大人になれないという気持ちを持つようになりました。

あれは私が20歳になろうとする夏休みのことでした。

私は、学校でマンドリンクラブに入ってフルートのパートを受け持っていました。たまたま、中学の時に買ってもらったフルートを持っていたからです。しかしそれが壊れかけていました。すると母が、「お前の20歳になるプレゼントとして新しいものを買ってあげるよ。」と楽器屋に私を連れて行き、余裕がなかったために月賦でフルートを買ってくれました。

その夏、私は度々フルートの練習をしていました。そんな時、2歳下の弟が「兄ちゃん、そのフルート吹かせてよ」と言って、私のフルートを取り上げようとしました。ところが私の方は大事なフルートだから弟に触られたら壊れてしまうと手を放しませんでした。その時、振り回したフルートから足部管が飛び出してしまい、抜け飛んだ足部管は壁にあたって、大きく窪んでしまいました。

私は大声で怒鳴ろうと思ったところ、不思議なことに、別の行動をしていました。弟が謝る中「いいよ、中から丸い棒で突いて直すから」と、平然としている私がいたのです。

私自身が、その行動にびっくりしていました。短気だ、我が儘だと思っていた自分が、弟をゆるせる大きな自分に変わっていたのです。

この思い出は、欠点のある自分が、思いがけないことで変わる可能性があることのしるしとして、それ以来私の大切な宝物となりました。