それでも神さまに助けてくださいと祈り、表向きは普通に雑誌の編集や書物の校正などに従事していました。しかし、煩悶は極に至り、自殺しようとまで考えました。が、信仰と祈りがあったので、土壇場で踏みとどまりました。
そのとき、戦後よく読まれていて、赤本と呼ばれていた『家庭医学』という本が家にあったので、藁にもすがる思いで、それを繙いてみました。すると、ある頁に「抵抗療法」という言葉がありました。その字を見た瞬間、自分はずうずう弁だから、人の前でしゃべれないとか、大学出ていないから、知識人の著者に会えないとか、やる前から、自分はできない、自分は駄目だと思って、劣等感に陥り、そのためにノイローゼになっているのだ。何事も当たって砕けろ、の精神で、まず実践してみなければ、出来るか出来ないか分からないだろう、ということに気がつきました。それで、勇気を奮い起こして、他人と積極的にしゃべるように努めました。すると何とすらすらとしゃべれるようになり、元気を取り戻すことができました。
要するに人にはみな自然治癒力があるのです。