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みんなで笑うこと

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

今でも心に残っている話があります。30年ほど前の話ですからどこで聞いたかは判らないのですが、不思議とはっきり覚えているのです。

れはある男子修道院での出来事です。多分クリスマスのことだと思います。修道院には、信者さんから沢山のケーキがプレゼントされました。そこで、皆が食堂のケーキの前に集まって、ケーキとお茶を頂こうとしたその時に、言い争いが起こりました。それは、なんと、どのケーキから先に食べるかということが発端でした。

その話を語ってくれた人も、バツが悪い顔をして、恥ずかしそうに、「大の大人がですよ、それも修道者がですよ、どのケーキから食べ始めるかで、けんか腰の言い争いですよ。全く情けない」と。

そんな中、修道院の責任者である院長がこの言い争いを終わらせようと、皆を制して発言しました。

「みんな、静粛に、静粛に。ケーキのことで共同体が分裂するのは良くないですよ。ほら、あの壁の額に書かれた文字を見てください。『主にあってわれらは一つ。』この言葉を皆かみしめてください。」

すると、間髪を入れず、一人の修道者が発言しました。「心は一つ、でも、口は沢山。」すると、一瞬しーんとなり、その後すぐに全員の大爆笑へと変わり、それがしばらく続いたのだそうです。

そして、それまでのけんか腰の議論が嘘のように、皆が和やかに一つのケーキから食べ始めたということです。

厳しい議論、難しい問題、出口なしの状況、そういった深刻な時に、ユーモアをもった人によって和やかな雰囲気が生まれ、皆が冷静になれることを、この話で感じたのでした。