その話を語ってくれた人も、バツが悪い顔をして、恥ずかしそうに、「大の大人がですよ、それも修道者がですよ、どのケーキから食べ始めるかで、けんか腰の言い争いですよ。全く情けない」と。
そんな中、修道院の責任者である院長がこの言い争いを終わらせようと、皆を制して発言しました。
「みんな、静粛に、静粛に。ケーキのことで共同体が分裂するのは良くないですよ。ほら、あの壁の額に書かれた文字を見てください。『主にあってわれらは一つ。』この言葉を皆かみしめてください。」
すると、間髪を入れず、一人の修道者が発言しました。「心は一つ、でも、口は沢山。」すると、一瞬しーんとなり、その後すぐに全員の大爆笑へと変わり、それがしばらく続いたのだそうです。
そして、それまでのけんか腰の議論が嘘のように、皆が和やかに一つのケーキから食べ始めたということです。
厳しい議論、難しい問題、出口なしの状況、そういった深刻な時に、ユーモアをもった人によって和やかな雰囲気が生まれ、皆が冷静になれることを、この話で感じたのでした。