竹筒からひとすじ水の糸がーー落ちる
石の器の水面に、円は広がり
しじまはあふれる
絶え間なく心に注がれるもの
心の靄に穴を空け
密やかに
わたしをみたす
ノートとペンを床に置くと蝉時雨は響き、いつしか日頃の悩みも軽くなっている己の心に気づきましたーーー。この旅に出る二週間前、同居していた義父が帰天し、その存在の大きさを後から感じました。家族でいろいろと話し合う中で、深い哀しみにおそわれましたが、今回の旅路で祈り続けるうちに、〈全てを天に委ねて、生きる〉という決意が、心に生まれてきました。
三千院の門を後にした私は、かつてこの場所を教えてくれたゆめ子さんに〈ようやく、来ましたよ〉と感謝の想いを抱きながら、次の場所へと歩き始めました。