うまくいく時は感謝されるが、うまくいかないと恨まれて悪口をいわれたりするので、私は高校生くらいになると、大切な時間を他人のために惜し気もなく使う父母をもういいかげんやめたらいいのにと横目で見ていた。
「なして、そげんに、他人のことに関わるとね?」と母にきいたことがある。
「そりゃ、わたしんどんがごと、学問もなか、地位も名誉もなか人間に相談に来るっていうことはよほどのことっち思うて、一はだ脱がんばっち、思うとたいね。こないだ、ラジオば聞いとったら、人間ちいう字はさ人の間に立つっち書くけん、他人が争いに巻き込まれた時にゃ、間に立って助けんばよっちいいよったとよ。偉か人がさ。」とすました顔をして答えた。
そういう私も夫と結婚して、今井の家族と同居すると、姑と大姑が水と油、とにかく仲が悪かった。若嫁の私は実の母に相談した。
「お互いがあがに悪口ばいいに来ても、絶対にあいづちは打たんこと。その代わり、お母さんが少しでもおばあさんのことをほめたら、100倍、1000倍にしておばあさんに耳打ちしたらよか。その逆も同じ。なんの、少しくらい嘘が混じっても、嘘も方便。神さまもゆるしてくれるとよ」と母は笑いながらいった。