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とりなし

新井 紀子

今日の心の糧イメージ

私は4人姉妹の三女として生まれました。今年の秋、古稀を迎えました。古稀のお祝いをしようと横浜に住む私の姉妹3人が函館郊外の大沼に集まってくれました。久しぶりに会った私たち姉妹は、思い出話やちょっとした失敗談などの話で大笑いするのでした。

こうして姉妹が仲良く過ごせるのも父の遺言があったからだと私は思うのです。

父は、今から30年ほど前に亡くなりました。父の遺言はただ1つ「姉妹仲良く」でした。

30年前、私たち姉妹はそれぞれ結婚し、別々に暮らしていました。父が春と秋に誕生会を開いてくれました。しかし、全員集まることができませんでした。子供たちが病気で家を離れることができなかったり、婚家の両親の病気や介護にかかりきりだったりして、お祝いどころではなかったのです。そんな状態の姉妹を父は心配していたのでしょう。病気で死期を悟った時、私たちに「姉妹仲良く」という遺言を書いたのだと思います。

その後、姉妹の子供たちは成人し、親から手が離れるようになりました。しかし、家庭の事情で甥や姪の結婚式にも出席できない姉がいました。出席した私たち姉妹は、「残念ね。出てこられるようになると良いわね」と口々に言ったものでした。

父が亡くなって30年が経ちました。いろいろな事情で集まれなかった姉が先頭に立って計画を立て、遂に4人全員が集まることができたのです。姉の希望だった函館山からの夜景は、天候に恵まれ、それはそれは美しかったです。帰る日まで周りがあきれるほど、よく話し、よく笑いました。

こんな幸せな日を迎えられたのは、父が、バラバラになってしまいそうな私たち姉妹のために、とりなしを祈ってくれていたからに違いありません。