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ぬくもり

越前 喜六 神父

今日の心の糧イメージ

人間関係というか、友人関係というのは、非常に大切ですが、同時に大変むつかしいと思います。子どものときから、ぬくもりのある人間関係の中で育ったことがないので、ぬくもりには恋愛のごとく惹かれます。わたしは寒い北国で生まれ、育ちましたので、寒さよりは暖かさが好きです。子どもの時、分厚い布団にくるまって寝るときに安らぎを感じたものです。また炬燵の中に入って、本を読んでいるときが、至福のひと時でした。

けれども、人が一番欲し、願っていることは、愛する人の傍にいて、「ヤマアラシのメスとオス」のように、つかず離れずの程よい距離を保ちながら、愛情こめて語り合い、共に食し、共に活動し合う関係ではないでしょうか。

人には相性というものがあります。気が合う人とは、別に努力をしなくても、自然に何となく気性が合うということがあります。そういう友人と一緒に居るときには、何となくぬくもりを感じるのではないでしょうか。

そういう人との共同生活が理想とは思いますが、現世はままならぬもので、ぬくもりを感じさせる友とはなかなか出会えないものです。仮に出会ったとしても、別れることが多いと思います。

わたしも若い時、教会で1人の女性が好きになりました。世の中は戦後の貧しい時代でしたが、彼女と一緒に教会の活動をしていた2年間は、本当に楽しく、幸せに満ちたものでした。特に、教会の活動を終え彼女を自宅まで送ってゆく道すがら、信仰の話をしていたときは、ぬくもりというか、恋愛感情とはこういうものかと思いました。間もなく、わたしは修道院に入りましたが、彼女も2年後に女子修道院に入りました。しかし、間もなく病に罹り帰天されました。

わたしのぬくもりは想い出です。