私の敬愛する詩人で、病気で療養中の方と文通をしておられる方がある。励ましが必要な方に手紙を送って交流しておられるのだ。フルタイムの仕事を持ち、家庭があり、詩人として原稿を書いた上での文通である。だから何人もの方に書けるわけではない。
そのうち一人の方の病気が進み、視力が弱くなられたので、手紙はカセットテープでの「声」の文通になった。視力が衰えて、どれほど辛かっただろう。そして自分を気遣って届けられた声に、どれほど支えられ勇気づけられただろう。この人がいてくれるから生きよう、と思ったのではないだろうか。手紙を送り合ううちに、2人の心は近づいてしっかりと繋がったのだ。
聴衆を熱狂させる話術も人を繋げることはある。だが本当に人を救うのは、時間をかけて育まれ、その人の喜びにも辛さにも寄り添う心の繋がりではないかと思う。