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年を重ねる

今井 美沙子

今日の心の糧イメージ

私は若い頃より、うんと年上の友人が多かったことは幸いであったと思う。

生きる上で必要な様々なことを、前を歩いている友人たちの姿から学んだ。また、結婚して以来、ずっと夫の両親と同居してきたので、生老病死をつぶさに見せていただいたことは特に感謝している。

私は今年71歳になる。3年前、大腸ガンの手術をして以来、体力、気力が以前に比べてずいぶんと失われた。しかし、全く焦りはない。

いつか私が30代の頃、70代の女性作家と会った時、"あきらめる"という言葉について「今井さん、あきらめるということは、何も無気力になってしまうことではなくて、自分の現状をあきらかに見るということなのよ。今はまだ、若いから、その意味はわかりにくいかもしれないけれど、あなたがいつか年を重ねた時、よく分かると思うわ」といわれたことを覚えている。

30年余りの月日を経て、今、私は自分自身をあきらかに見る能力が身につきつつあることを思う。自分の体力や気力がおとろえても、まだまだ自分には出来ることが沢山あることを指を折って数えてみることがある。

今日も洗濯物を干してとり入れてたたむことが出来たし、朝、昼の食事の準備もできたし、買い物にも行けたし、電話の応対もとどこおりなく出来た。6匹の内猫の世話もした。

こうして心のともしびの原稿も書けている。

これ以上、何を望むことがあるだろうか。

何よりも年を重ねるごとに、聖書を深く読み込む力がついてきたように思う。

若い頃にはよく理解できなかったことが、70年の体験から「ああ、こういうことだったのか」とわかるようになってきた。

そして、結論として、「年を重ねることはいいものだ」と若い人たちに伝えたい。