巨大な石亀を見つけてきた時には、池が必要だということが分かりました。夫と弦は2人で庭の片隅に大きな穴を掘り、池を作りました。石亀はその池に何年も住み冬眠もしたのです。
弦は高校生になりました。ある日、雀の雛を抱えてかえってきました。「空から雀の雛が落ちてきたんだよ」。餌にするワムシを我が家の冷蔵庫に入れていたのには、動物好きな私でも参りました。
高校の父兄会へ行った時です。鶏小屋に入って鶏糞を掃除している一人の生徒がいました。
〈まあ。奇特な生徒がいるものね〉私はそう思いながらよく見ると、なんと息子の弦ではありませんか。
鶏が野犬に襲われ、弦は鶏を獣医のところへ連れて行きました。すると獣医は、親切に診てくれたばかりでなく、学校で飼っている鶏だからとお金を取りませんでした。
そんな獣医に出会った弦は、将来動物のお医者さんになりたいと強く考えるようになりました。
願いがかなって、10年ほど前に、横浜で動物病院を開業することができました。毎日たくさんの動物たちがやってきます。弦はどんなに忙しくても楽しそうです。動物を助けてあげることが好きなのです。私たち夫婦は語り合います。
「弦の夢がかなって、本当によかったね」