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子育ての実り

村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

「親が先に居て、子供を生み育てる。子育て中の責任は親の側にあります。とは言え、子育てにおいて、全ての親は初心者で未熟者であるのも事実です。子育てにぶつかりながら自分も育っていく。方法は拙くとも親は全力で子供に向かうものですから、場合によっては、親が子供に謝ってもいいのです。」大学時代、児童心理学と発達心理学の講義をして下さったO教授のお言葉です。

先生は生涯独身でいらしたので、よく冗談半分に「私が学会で発表すると、それは理想で現実の体験なしにそれはないとか言われて、悔しい思いをすることがあるの、どうぞ皆さんのお子さんで実験してくださいな。きっと確かな結果が出る事、間違いなしよ」といわれたものです。

私は24歳で長女を授かりましたが、妊娠が解った時、教授に子育て実験をする決意をお伝えしましたので、先生から1冊のノートを頂いていました。子供のベッドサイドに置いて、駆けつけるたびに印をつけるのです。初めて言葉らしい発声をしたときの音も書きとってあります。赤ちゃん日記の様なものですが、後で書くのではなく一瞬毎の記録なので、自分がどんなに慌てたか驚いたか、不安も喜びも初心者ならではの記録になりました。

教えないのに言葉の発達がはやく、気持ちを全身で表現する元気な子で、親に似たところもありますが、全く違う人格だと気付かされることの方が多く、神様が授けて下さったと実感する日々でした。

それから今日まで半世紀近くなりましたが、親が謝ることの大切さ、子供の可能性を信じ、老いていなくとも子に従っていい場合があるということを、度々体験しました。次女の時には、別の体験があり、「子育ての実り」は人生の賜物です。