この苺の話と一緒に、覚えている話があります。
日本に難民で移住してきたあるベトナム人の父と子の話です。
その家庭に私が夕食に呼ばれた時のことでした。小学校6年生の男の子の両親が私に「この前、大変なことがありました。私たちの子供が中学受験をしたのです。子供は大変自信を持って受験したのですが、落ちてしまったのです。その夜、子供は自分の部屋から出てきません。つらくてずっと泣いているようなのです。」それで、夫婦で話し合い、お父さんが子供の部屋に入り、「久しぶりに一緒に寝よか。お前の悲しみを聞いてあげるよ」と子供が疲れて寝てしまうまで、子供と会話を交わしたのだそうです。
そしてその次の日に、男の子は「お父さん昨日はありがとう!こんどは頑張るよ」とさわやかな声で話したのだそうです。
きっとこの体験は、この子の宝物になるに違いない、そのときの体験をきっと自分の子供にも伝えるに違いない、そう私は思ったのでした。