デザートには予想通りりんごが出て来て、私は皮を剥いた。するとご家族の口からなぜか「あ・・あ・・あ・・」という悲しげな声がもれてくる。二切れ分の皮を粉々に削ったところで私は力が尽きた。「ちょっとお手洗いに行って参ります」と言って席をはずし、気合を入れて戻った時には、りんごはきれいに剥かれ、お皿に盛られていた。
未来を予測するだけでは足りない、その未来で発揮できる実力が必要なのだ。その日私は自分の心も手も未熟であることをひしひしと感じた。何といっても、付け焼き刃の技術で料理上手に見せかけようとしたのだから。結婚後、沢山のりんごをきれいに剥いたが、最初のこの一個が忘れられない。