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先取りする

阿南 孝也

今日の心の糧イメージ

時速500キロで走行し、東京・名古屋間をわずか40分で結ぶ夢の乗り物リニアモーターカーの工事が始まります。日本の技術力を世界に示したいとの期待が膨らむ反面、不安も感じています。

ある学者の「リニア建設は、未来の人たちが取り組むべき仕事だと思います。私たちがその仕事を先取りして、後世に借金を押し付けることにならないか心配です」との指摘が心から離れません。リニアの経済効果が未来の人たちを潤おすのであれば、賢明な先行投資と言えるでしょう。しかし人口減少期を迎えたわが国で、果たしてリニア新幹線と既存の新幹線が共存できるのか、危惧を抱いてしまうのです。

原子力発電の是非も意見の分かれるところでしょう。ただし、推進派、反対派に関わらず取り組まなければならない深刻な問題、それはこれまでの40年間に排出された核廃棄物の処理です。保管場所も決まっていません。また放射線量が安全値に達するまで、何と10万年間も隔離し保管し続けなければならないのです。キリスト誕生から現代まで2千年間の50倍と言われても想像のつかない長さです。はるか未来の子孫にまで、負の遺産を押し付けてしまったことを申し訳なく思っています。さらに私たちは、地球が数億年かけて蓄えてきた石油資源を、産業革命以降のわずか200年間で使い切ろうとしているのです。

「地球上のすべてのものは、未来の子どもたちからの預かり物です。良い状態で引き継がなければなりません」というアフリカのことわざに耳を傾けたいと思います。

物の豊かさや便利さではなくて、身の丈に合った、心豊かな暮らしを求めて、地球という星と共存していくことができますように、心からそう願っています。