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先取りする

シスター 山本 久美子

今日の心の糧イメージ

「先取りする」ということには、前もって未来の何かを予測し、準備するというような意味があります。どこか賢明で積極的なイメージを受けますが、同時に、まだ現実に起こってもいないことへの心配や不安を「先取り」して、「取り越し苦労」する場合もあります。

主イエスは、「神の国はあなた方の間にある」(ルカ17・21)、「明日のことは思い悩むな。明日のことは明日みずからが思い悩む。その日の苦労はその日だけで十分である」(マタイ6・34)と言われました。主のこのみ言葉を心から信じる信仰によって、今、1人ひとりのうちに「神の国」を先取りすることを約束してくださる言葉です。

私たちは、「過去」をふり返って、いろいろな人生の教訓を引き出し、これまでにいただいた多くの恵みに感謝することができます。そして、「未来」を思い描いて、理想とする自分や社会に対する意識を高め、予定や計画、もっと広い人生設計を立てることもできます。しかし、そうしながらも、私たちは、常にその時その時の「今」を生きているのです。

イエスが約束される「神の国」の先取りとは、死後の世界や天国の約束というよりも、今、ここで、どのように「神と共に生きる」ことができるのかという、私たちの生き方への問いかけであり、招きなのです。

主イエスは、私たちに、過去を引きずって生きることも未来について過度に心配しながら生きることも望まれません。過ぎし日の苦労も明日への心配事も、「必要なことをご存じである」神様に委ねて、その大きな計らいに信頼して生きるように、日々呼びかけてくださっているのです。