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繰り返し

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

「やればできる。頑張れ」と、子どもの頃、学校の先生からよく言われた。確かに、頑張れば、自分にできるところまではできるようになる。頑張らなければ、できるはずのことさえできないまま終わってしまうから、頑張るのはやはり大切なことだ。「やればできる」という先生の励ましには感謝している。

だが残念ながら、頑張れば何でもできるようになるという訳ではない、というのも大人になるにつれて学んだ厳しい事実だ。頑張れば誰でもサッカー選手になったり、作家や歌手になったりできるわけではない。頑張ってもどうしても越えられない一線というものが、確かにあるようだ。

頑張ればできると信じて挑戦し、成功してさらに上を目指す。頑張ればできると信じて挑戦し、失敗して自分の限界を知る。そんなことを何度も繰り返すうちに、わたしたちは自分に何ができて、何ができないかを知ってゆく。神様から自分に与えられた役割を知る、と言ってもいいだろう。自分の役割は時代を作るようなスーパースターではなく、時代の片隅で歌い続ける歌手だった。自分の役割は、歌手ではなくボイス・トレーナーとして歌手になりたい若者たちを助けることだった。挑戦を繰り返す中で、わたしたちは誰もがそれぞれの役割を見つけてゆく。それが、成長するということ。大人になるということなのだろう。

挑戦しなければ、自分に何ができて、何ができないのかいつまでも分からない。失敗を恐れずに挑戦する。それが何より大切だ。そして、挑戦を繰り返す中で、いつか自分にできることと、できないことの見極めがついたなら、それを神様から自分に与えられた役割として喜んで受け入れる勇気を持ちたいと思う。