高山右近が直面した最大の危機は、仕えていた荒木村重が信長に反旗を翻したときでした。人質を差し出している村重につくか、キリシタン保護のために信長につくか、苦渋の選択を迫られたのです。右近はひたすら祈ったと伝えられています。祈りの末、彼がとった行動は、髪を下ろし、何も持たずに信長のもとへ出向くことでした。食うか食われるか、各々が自分の利益だけを考えて行動する殺伐とした時代にあって、右近は自らが犠牲となることによって、血を流すことなく解決する道を選んだのです。
乱世を生き抜いたこのパウロ三木と右近に共通するもの、それは本当の主君は信長でも秀吉でもなく、イエス・キリストであったということです。パウロ三木は、「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです」(ルカ23・34)と祈られた十字架上のイエスに倣いながら天に召されていきました。右近は信仰ゆえに、この世での財産をすべて没収され、27年に及ぶ追放生活を喜びのうちに生き抜き、大勢の人々に神の愛を証しする生涯を送りました。
私たちも先輩たちに倣って、「本国が天にある」(フィリピ3・20)ことを忘れることなく、喜びのうちに神を証しする人生を歩むことができますように、祈り求めたいと思います。