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自分らしく

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

小学生の頃、母と列車に乗って、自宅へ帰る途中に、見知らぬおばあちゃんから親しく声をかけられた経験があります。その時母から、「あんたは、小さい頃から田舎に預けられ、おじいちゃん子おばあちゃん子だったから、年寄りから声をかけられやすい雰囲気を持っているんだよ」といわれたことがあります。

確かに、子供の頃の私は、結構わがままであるのにもかかわらず、また兄弟が一緒にいるにもかかわらず、私だけがお年寄りから声をかけられる経験をしましたが、色々な体験が、その人の人格を形成していくと感じます。

中学になるまで、風邪をひいては学校を休んだ経験からは、弱そうにしている人、元気のない人に知らないうちに気がとられてしまうこともありました。自動車を運転していても、そのような人を発見すると、この人の人生は大丈夫だろうかと考えてしまいます。

修道会への入会のため、駅へ1人で向かおうとしていた時、弟が「兄ちゃん大丈夫か」との思いから、一緒に駅まで見送りにきてくれた時には、兄弟を大切にしなければとの思いを深めました。

人間はその経験、実体験、あるいは原体験から、損得や経験を越えた、生き方の基本を身に付けていくようです。結核患者のために生涯を捧げたある神父の伝記を読んでいると、日本に来て神父としての駆け出しの頃、盲腸で生死をさまよい、回りからもう駄目だと思われたという体験が、その後の人生に活力を与えたのだと私には感じられます。

列福された右近の人生も、若い時に瀕死の状況から回復した人生に、その後の右近の土台を感じます。

人の体験は、どんなに小さなものでも、その人を形作っていることを感じるこの頃です。