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自分らしく

小川 靖忠 神父

今日の心の糧イメージ

「殉教者・高山右近というのが今回の列福の最大の焦点になっています。すなわち一気に死にさらされた殉教者ではなく、自分の意に反してゆっくりとキリストのために長く死んでいく、この人の生涯を追うことで現代を生きているわたしたちも日々起こる出来事を受け止めて死んでいく、こういうメッセージを今回の列福は持っています」と、神のもとに召された溝部名誉司教様が、テレビ番組の中でおっしゃいました。

実生活のなかで神を感じ、信仰を表現していく右近の生き方、今のわたしたちにとって大きな励ましであり、慰めでもあるなとわたしは感じます。

「らしさ」というのは、その人の個性であり、その人たらしめる特性ともいえるものではないでしょうか。「女性らしさ」を感じるとか、「男性らしさ」を感じるとは、一人ひとりによって、その中身に違いがあるのではないかと思います。要するに、一人ひとりは等しく魅力ある資質を備えているのです。だからこそ、その人生を振り返ったとき懐かしい思い出、体験を一人ひとりは持っているのです。その上に今の「わたし」があります。

そして、それは子ども、孫、後世の人に引き継がれていきます。「相続」は何も財産ばかりでなく、親や先輩の、人生観、信仰観だって忘れてはいけない大事なものです。中でも「信じて仰ぐ心」こそ、人間らしい、信仰者らしい自分にしてくれます。

信じることは生きるエネルギーです。

高山右近は、その力を日常生活の中に見出し、日々高め、深めていったのです。今のわたしたちにとって、日常生活は、どんな些細なことでも自己を強め、聖者に向かわせる積み重ねである、とのメッセージを新たに呼びかけられている恵みの時となりました。